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	<meta name="author" content="加納　景">
	<meta name="keywords" content="保坂和志,プレーンソング,草の上の朝食,書評">
	<meta name="description" content="『プレーンソング』、『草の上の朝食』書評。">
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	<title>幸福な現代文学</title>
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	<li id="POINT">幸福な現代文学</li>
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<h1>幸福な現代文学</h1>
	<h2>保坂和志著『プレーンソング』、『草の上の朝食』について</h2>
	<p>「幸福な家庭はすべて互いに似かよったものであり、不幸な家庭はどこもその不幸のおもむきが異なっているものである」（木村浩訳）と、トルストイは『アンナ・カレーニナ』を書き出した。保坂和志氏は、しかし、トルストイの定義に対して、ある回答を導き出した。それは、幸福の多様性であり幸福のもたらす「物語=リアル」の幅だった。</p>
	<hr>
	<p>デビュー作『プレーンソング』と、その続編『草の上の朝食』は、何か事件が起きる訳でもなく、誰かが死んだり悲しんだりする小説でもない。仲間が勝手に集って、勝手に暮らす。近所の猫の世話をしてまわるよう子といつも騒いでいるアキラ、いつも寝ている島田に「僕」。物語は果てしなく能天気で、陽気で、幸福感に満ちている。</p>
	<p>むろん、それが保坂氏が意図して作り上げた世界観であるのは言うまでもない。『アウトブリード』（河出文庫）や『書きあぐねいている人のための小説入門』（草思社）において、著者自身がすでにその方法論を示しているように、我われが「日常」として感じる「リアル」な出来事を、出来事としてそのまま放り出している。</p>
	<hr>
	<p>この2つの小説は、ふたつでひとつと考えるべきなのだろうが、僕は、あえて、『草の上の朝食』のほうが優れていると言おう。『朝食』のほうが、登場人物の魅力を引き出すのに成功しているからだ。たとえば、アキラと島田の癖をきちんと描いておいて、「僕」がそのふたりの癖を同時にだしてしまうところなんか、滑稽でなかなか面白い。だが、キャラクターの性格が立っていることによって最も成功しているのは、「僕」の恋人である工藤さんが、その奇妙な共同生活に割って入った際の、外部と内部の接続による混乱と整合を、たくみに描写している点だろう。そしてそれは、我われが常に体験している（あるいは作中でも引用されたニーチェの言葉のように）「繰り返し現われる典型的な体験」を、リアルに描いていることに他ならない。</p>
	<hr>
	<p>古典的なドラマツルギーは、人間の不幸を多彩に描くことに苦心した。保坂氏は、しかし、幸福が幸福であることを、もっとも鮮明に描き出した。これを、日本の散文の到達点として認めるべきだし、誇ってよいものだ。そして著者は、それでもまだ、とどまらず邁進していることもここに付け加えるべきだろう。</p>
<h2 id="FOOTER">この文書について</h2>
	<dl id="STATUS">
		<dt>初出</dt>
		<dd><a href="http://d.hatena.ne.jp/kanou/20041014">undercooled:2004-10-14</a></dd>
		<dt>公開</dt>
		<dd>2004-11-17</dd>
		<dt>改定</dt>
		<dd><!--#config timefmt="%Y-%m-%d" --><!--#flastmod file="kouhuku.html" --></dd>
		<dt>制作</dt>
		<dd>加納　景 &lt;<a href="mailto:%77%65%62%6D%61%73%74%65%72%40%70%6F%65%73%69%61%2E%6A%70">webmaster&#64;poesia.jp</a>&gt;</dd>
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